1ヶ月ほど前の話になりますが、ミュージカル『エビータ』を鑑賞しました。
俗っぽいあざとさとファーストレディーとして聖女の顔を併せ持つ、アルゼンチン大統領夫人のエヴァ・ペロンの生涯を描いたこのミュージカル。
映画版のマドンナは超ハマり役だった記憶がありますが、今回の主演を務めたエマ・キングストンさんは歌唱力も高く、圧倒的な輝きを持つエビータを魅力的に演じられていました。
舞台構成はかなりシンプル。
役者の演技と楽曲の力で見せつけてくれる、ミュージカルの良さが存分堪能できる演目です。
エヴァの劇的な一生を追体験して感じたことをまとめてみたいと思います。
エビータあらすじ
私生児としての生い立ちを持ち、女優から大統領夫人まで成り上がった彼女の生涯がどのような道を辿ってきたのか、狂言回しの「チェ」という男の視点から語られます。
チェはエヴァを大熱狂で讃える国民とも、教養もなく生い立ちも悪い彼女を批判する富裕層や軍部とも距離を置いて、冷静な目で状況を語ります。
大統領になるまでのエヴァは、女を武器にして男に取り入り、成り上がって行きます。
女の立場から見るとあまりにもあざとく、好感を持てるキャラクター、、、ではありません。
が、美しい容姿と自分の魅力を信じる力の強さが強烈な光を放って男性を引き寄せる魅力があるのは納得ができました。
ペロンと出会い、大統領夫人となった後のエヴァは、国民の光であろうと奮闘します。
自分自身が社会から虐げられていた時代を生きた経験もある彼女の言葉は力強く国民を魅了します。
圧倒的な人気を手に入れ、あと一歩で副大統領という権力を手に入れようとしていたその時、彼女の体は容赦無く病魔に蝕まれて、33歳という若さで一生を終えました。
エヴァの視点から見える正義
エヴァは聖女なのでしょうか?それとも悪女なのでしょうか?
エヴァは今でもアルゼンチンではとても人気があり、このミュージカルも本国では物議を醸したようです。
このミュージカルでは、彼女の大統領夫人になるまでのあざとさや大統領夫人になった後の権力欲のようなものが結構前に出てきている印象が強いです。
チェの視点で語られているので、観客も彼の視点で物語を追体験する形になっているためです。
その後の歴史から見ても、恐らく、このミュージカルで描かれている彼女の立ち振る舞いはある意味、事実を語っているのだと思います。
では、彼女の大統領夫人になってからの行動は、彼女自身の私利私欲を満たすための行動だったのでしょうか。
私は、彼女は彼女が信じる正義を貫いていたのだと思えました。
決して自分のためではなく、自分と同じように虐げられた状況にある国民の光であろうとしたのだと思います。
必死で特権階級と戦い、国民を救うんだ、という使命感にかられていたはずです。
だからこそ、国民の大多数を占めていた労働階級の民衆にとっては救いであり、今でも支持されているのだと思います。
でも、彼女には十分な教養がなく、彼女の選択はあまりに短絡的で全体を見通した策ではなく、その後の混迷を招いた一因になりました。
彼女の短命もそんな彼女が引き寄せてしまった結果のようにも思えました。
ある立場から「善」と思える行動であっても、立場を変えるとそれが「悪」にもなり得ます。
そして、全体を見通したバランスを考えられずに善悪を判断すると、正しい方向性に進めなくなります。
歴史の中にはそれが様々な形で「事件」となって遺されています。
歴史を学ぶことは、様々な視点を持つ訓練になりますね。
せっかくなので、アルゼンチンの歴史をもう少し掘り下げて調べてみたいな、と思います。
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